東日本大震災のときの津波はまだ記憶に新しいと思いますが、地震大国である日本ではそれ以外にも様々な津波の被害に遭ってきました。地震を原因とする津波での被害は地震保険で補償されるのでしょうか。詳細について説明します。
地震・噴火が原因の津波は地震保険で補償される
地震保険は「地震・噴火またはこれらによる津波を原因とする火災、損壊、埋没または流失による建物や家財の損害」の補償を受けることができます。つまりは、地震・噴火によって起こった津波で保険の対象である建物や家財に損害を負った場合というのは地震保険の補償範囲内です。逆に、地震保険には入らずに火災保険だけという場合では補償を受けることができないので注意しましょう。
地震保険で補償されない場合
津波による被害を受けても地震保険では補償を受けることができない場合もあります。どのような場合に補償を受けられないのか説明します。
損害が一部損に満たない場合
地震保険では損害の状況に応じて「全損」「大半損」「小半損」「一部損」に区分され、区分された損害の程度に従って保険金が支払われます。損害の程度が「一部損」に満たない場合は地震保険の保険金が支払われません。
2016年12月31日以前始期の契約は「全損」「半損」「一部損」に区分されます。
2017年1月1日以降始期
損害の程度 | 建物の基準 | 家財の基準 |
---|---|---|
全損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合 |
大半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の40%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の50%以上70%未満となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の60%以上80%未満となった場合 |
小半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上40%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上50%未満となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上60%未満となった場合 |
一部損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・大半損・小半損に至らない場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合 |
2016年12月31日以前始期
損害の程度 | 建物の基準 | 家財の基準 |
---|---|---|
全損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の50%以上となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の70%以上となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の80%以上となった場合 |
半損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の20%以上50%未満となった場合、または焼失もしくは流失した部分の床面積が、その建物の延床面積の20%以上70%未満となった場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の30%以上80%未満となった場合 |
一部損 | 地震等により損害を受け、主要構造部(土台、柱、壁、屋根等)の損害額が、時価額の3%以上20%未満となった場合、または建物が床上浸水もしくは地盤面より45cmをこえる浸水を受け、建物の損害が全損・半損に至らない場合 | 地震等により損害を受け、損害額が保険の対象である家財全体の時価額の10%以上30%未満となった場合 |
門や塀のみの損害
門や塀は建物の主要構造部には含まれないので、門や塀のみに損害を受けた場合は「一部損」に満たず、地震保険で補償を受けることができません。
自動車やバイクの損害
自動車やバイク(総排気量125cc超)は家財の範囲に含まれないので、地震保険では補償されません。自動車やバイク以外にも、通貨や有価証券、切手などや1組30万を超える美術品などのいわゆる明記物件は地震保険の家財に含まれないので補償の対象外です。
避難生活中の盗難
地震による津波が遠因である場合もありますが、避難生活中に起きた盗難については地震保険では補償の対象外です。
津波が発生した日の翌日から10日経過後に生じた損害
地震や噴火、津波が発生した翌日から10日経過後に生じた損害については因果関係がはっきりとしなくなるので保険金が支払われません。
地震・噴火以外が原因で起こった津波の損害
津波は地震によって引き起こされるものが広く知られていますが、それ以外が原因でも引き起こされます。火山噴火が原因のものについては地震保険の補償対象ですが、地震や噴火以外の原因で山体が海に崩落して津波が起こったり、隕石が海に落ちて津波が起こったりした場合は地震保険による補償は受けられません。
津波に備えるためには地震保険に加入しよう
地震や噴火が原因の津波による被害は地震保険で補償を受けることができます。津波による被害のすべてに対して補償を受けられるわけではありませんが、地震大国である日本では津波の危険性が全くない地域は少ないと思います。津波による損害は火災保険では補償されないので、津波に備えたい場合は地震保険に加入しましょう。
著者情報
堀田 健太
東京大学経済学部金融学科を卒業後、2015年にSBIホールディングス株式会社に入社、インズウェブ事業部に配属。以後、一貫して保険に関する業務にかかわる。年間で100本近くの保険に関するコンテンツを制作中。